『ニッポンの投書』宝島社
これは面白い。
爆笑してしまった。
新聞や雑誌に投稿された、素人さんの投書である。
ただただ面白い。
それでは投書を2つ紹介してみよう。
『29歳の主婦。3つ年下の主人はマザコンで、1人では何もできません。
昨年、継母が亡くなってから以前よりひどくなり、食事、トイレ、着替えなど1人ではできないので、私が全部手を貸しています。ふろは、義父が入れてくれます。
食事の時は箸を持てないので、私がスプーンで口まで持っていき、トイレに行きたいと言われれば、かつぎ上げます。私は現在妊娠8か月。動くのがやっとなので、最近はオムツを着けさせることにしました。本当に赤ちゃんと同じです。出産したら、2人の赤ちゃんの面倒をみることになりそうで、先が思いやられます。』
いかがであろう。
この29歳の主婦は夫の状態を「マザコン」の一言ですませてしまっているが、本当にそれで良いのであろうか?
すぐに「マザコン」の意味をウィキペディアで調べ、必要とあらば夫を病院に連れて行ってもらいたいと思う。
それでは、もう1つ。
『編集長さんは35歳、独身で、娘と結婚したいというような意向も漏らされたとか、クリスマスイブには娘のためにホテルをとってくださって、そこで泊まったと言います。
ところが、1月中旬から娘はふさぎ込んでしまい、バイトも学校も行かなくなってしまいました。
聞いてみると、彼(編集長)が、ものすごいサディストで、ホテルに泊まった晩、荒縄で娘を縛り上げ、さるぐつわをかませ、全身に色とりどりのろうそくをたらし、そのままバスタブにつけて、娘はあやうく水死しそうになったのだ、と言います。もう彼の顔も見たくないし、恐ろしくて会社にも行けない、と娘は申します。
せっかく決まった勤務先をこんなことで棒に振るのはもったない、娘もわがままだと私は思うのですが、娘は「今は何も考えたくない、もう一生遊ばせてくれ」と言うので、私はこんなことを主人にも話せず、1人もんもんとしています。どうしたものでしょうか。』
この母親の懐の深さに驚愕しているのは、私だけではないはずだ。
娘の身に起こったことを「こんなこと」と一蹴し、さらには「娘もわがままだと私は思う」発言。
しかし娘は確かにわがままかもしれない。
どさくさに紛れてとんでもないことを言っている。
ひょっとするとこれは、一生遊んで暮らしたと思うわがまま娘の虚言という可能性も考えられる。
このように「ニッポンの投書」とは大変おもしろい本なのである。
笑うことが好きな人は、古本屋でこの本を見つけた時には迷わず購入することをお勧めする。
『365日たまごかけごはんの本』読売連合広告社
この本には365種類のたまごかけごはんが載っている。
しかしである。
たまごかけごはんを365種類作るというのは、ちと無理がある。
「毎日違う味のたまごかけごはんを食べるって、面白くね?」というおそらく企画ありきで考えたと思われるたまごかけごはんの中には「そりゃないんじゃないの?」というものがけっこう含まれている。
トマトをのせたりお菓子をのせたり果物をのせたりポテトサラダをのせたりとかなり苦しい。
さらにはカレーや鶏そぼろ、ウナギ、マグロ、うに、牛タンなど「それってたまごがなくても美味しくいただけるんじゃないの?」というものもある。
「たまごかけごはんにカレーをかけちゃいました~」はカレーライスであってたまごかけごはんではない。
やはりたまごかけごはんは、たまごが主役でなければいけない。
「今日は美味しいインスタントラーメンの作り方をご紹介します。使う材料は神戸牛とトリュフ、フォアグラ・・・」などと言われて納得する人はいないであろう。
この本のタイトルは「いろんな丼飯に生卵をのせちゃった本」の方がスッキリくる。
批判的なことを書いたが、美味しそうなたまごかけごはんもたくさん載っているので、一人暮らしのすぼらでいつも金欠ぎみの男性諸氏が古本屋でこの本を見つけたならば、買ってみても良いかもしれない。
『寿司問答 答江戸前の神髄』嵐山光三郎 筑摩書房
北海道は寿司が美味いと言われている。
確かに美味い。
回転寿司(トリトン、花まる、なごやか亭、等々)でも普通のお寿司屋さんと同じくらい美味しい寿司が安く食べられる。
寿司は素材が命である。
素材さえ良ければ、何も手を加える必要はない。
だが江戸前の寿司は手を加える。
この本に出てくる寿司もただ魚を切っただけというものはない。
煮る、締める、漬け込む、焼くなどひと手間加えることによって、素材の美味さをさらに引き出している。
元々は魚を腐らせないための保存法として考え出されたものであるが、旨みを引き出すという方向へ進化しているのだ。
私はまだ江戸前寿司を食べたことがない。
死ぬまでに一度は食べてみたいものだが、問題は値段である。
この世はお金じゃないんだよ。
幸せの価値をお金ではかることはできないんだよ。
ウフフフフ。
しかし、お金がなければ美味しい江戸前の寿司を食べることができないじゃないか!
一生お金に縁がなさそうなので、もうこうなれば本やインターネットなどで江戸前寿司のことを調べ自分で握っちゃろかと思っている。
『トリガー』板倉俊之 リトル・モア
お笑いコンビ「インパルス」の板倉俊之の小説である。
小説を書いていたのか。
お笑い芸人なので、笑える小説なのかと思いきや、鋭い眼光のお兄さんが銃を片手に「トリガー」である。
爆笑問題の太田光が絶賛している。
しかし、何故だか読む気が起きない。
私はまだこの本を読んでいないのだ。
2028年、射殺許可法下の日本。
拳銃ベレッタを手に、トリガーが「悪」を裁く!
帯にはこう書かれている。
これは悪を裁く小説なのだ。
本の状態はとてもキレイで新品のようだ。
帯も付いていて、この本を売った人は本を愛し本を大切にする人なのだろう。
そんな人が読んだ本なのだから面白くないわけがない。
しかし、しかしである。
読む気が起きないのだ!
108円といえど、お金を払って買った本なのだから死ぬまでには読もうと思う。
『眠れないほど面白い都市伝説 驚愕篇』並木伸一郎 三笠書房
並木伸一郎「眠れないほど面白い都市伝説 驚愕篇」
知ってしまったら……必ず、誰かに話したくなる!
と書かれているが、まったく話したくならない。
むしろ絶対に話したくない。
「スティーブ・ジョブズは生きている」とか「半魚人『オラン・イカン』は実在する」とか「超巨大UFOが太陽エネルギーを吸いとっている」などと話したら、確実に周囲から孤立してしまうだろう。
この本は、まったく役に立たない情報がまじめな文章で書かれているので、笑うこともできず、読み終わった後、虚無感だけが胸に残る。